論文掲載 Brain Sciences
大学院博士前期課程を修了した佐々木杏莉さんの研究論文が国際学術誌「Brain Sciences」に採択されました。本論文は、鈴木栄三郎講師、村成幸教授、鈴木克彦教授の指導のもと実施した研究です。
本研究では、健康な成人を対象に、運動観察療法における観察時間の違いが手指の巧緻動作パフォーマンス、ミラーニューロン活動(脳活動)、および観察中の主観的精神運動負担に与える影響を検討しました。参加者は、1分間、2分間、3分間の手指巧緻動作の観察を行い、対照条件として2分間の幾何学模様の観察も実施しました。手指巧緻動作には片手でのボール回転課題を採用し、介入前後で手指の巧緻動作パフォーマンス(ボール回転数やエラー数)とミラーニューロン活動(経頭蓋磁気刺激による運動誘発電位振幅の増加率)を測定しました。また、介入後には集中度、身体的疲労、精神的疲労を数値評価尺度で評価しました。その結果、巧緻動作パフォーマンスは、対照条件と比較して2分間の観察で介入手が、3分間の観察で非介入手が有意に向上しました。ミラーニューロン活動は、2分間の観察で対照条件よりも有意に大きくなりました。また、1分間の観察に比べ、2分間と3分間の観察では精神的疲労が高く、3分間の観察では集中力が低下しました。
これらの知見は、観察時間が手指巧緻動作とミラーニューロン系の脳活動に様々な影響を及ぼし、特定の時間間隔で最適な効果が観察されることを示すと同時に、観察学習と精神運動負担の関係を明らかにしました。本研究成果は、脳卒中患者のリハビリテーションにおける運動観察療法の効果的な実施方法の確立に貢献することが期待されます。
掲載誌:Brain Sciences
論文名:Impact of Observation Duration in Action Observation Therapy: Manual Dexterity, Mirror Neuron System Activity, and Subjective Psychomotor Effort in Healthy Adults
著者:Anri Sasaki, Eizaburo Suzuki, Kotaro Homma, Nariyuki Mura, and Katsuhiko Suzuki
DOI:https://doi.org/10.3390/brainsci15050457