論文掲載 山形理学療法学
大学院博士前期課程在学中の舩山大和さんの研究論文が「山形理学療法学」に採択されました。本論文は、鈴木栄三郎講師の指導のもと実施した学部卒業研究の内容をまとめたものです。
本研究では、健康成人を対象に、運動イメージ能力の評価指標である「Delta time(デルタタイム)」を運動課題、イメージ人称視点、運動スキル経験別に比較し、その特性を検討しました。Delta timeとは、実際の運動にかかる時間と頭の中でその運動をイメージした時間の差を表す指標です。参加者には、立ち上がって歩いて座るまでの一連の動作を評価するTimed Up & Go Test(TUG)と10メートル歩行試験(10MWT)を実際に行ってもらうとともに、これらの動作を一人称視点(自分の目線)または三人称視点(他者の目線)でイメージして行う課題を実施しました。実際の運動とイメージ想起での所要時間の差であるDelta timeを算出し、運動課題、人称視点、対象者の運動スキル経験別に比較しました。その結果、Delta timeは課題の難易度が上がると増加すること、複雑な課題では三人称視点でのイメージで減少し、球技などのオープンスキル競技(状況が変化する環境での運動)経験者でこの傾向が強くなることが示されました。
これらの知見は、Delta timeを用いた運動イメージ能力評価における基礎的なデータを提供し、リハビリテーション分野における運動イメージ訓練の効果的な実施方法の確立や、スポーツ選手のメンタルトレーニングへの応用に有益な示唆を与えると期待されます。
掲載誌:山形理学療法学 21: 15-20, 2024
論文名:Delta timeによる運動イメージ能力評価 : 運動課題, イメージ人称視点, 運動スキル経験別の比較
著者:舩山大和,鈴木ひかる,鈴木栄三郎