学科・学部

パーソナルツール
ホーム > 学科・学部 > 作業療法学科 > お知らせ > 作業療法学科長だより > 創心會地域支援ネットワークの視察

創心會地域支援ネットワークの視察

山形県立保健医療大学 作業療法学科 藤井 浩美
 2015年8月27日-28日に、岡山県倉敷市を本拠地とする株式会社「創心會 そうしんかい」とその関連施設を見学しました。はじめに、二神雅一社長(作業療法士)と廣田聖治取締役(作業療法士)に導かれて、創心会リハケアタウン(東館)にある研修室を訪れました。ここでは創心會関連の株式会社「ハートスイッチ」に所属する大森美由紀氏が、ヘルパー候補者への養成講座を行なっている最中でした。約100名収容の研修室は、地域住民にも開放しているとのことでした。二神雅一氏は、職員教育のみならず、地域へのケア教育にも熱心に取り組まれている方でした。
 次に、NPO法人「未来想造舎和—久」の鈴鹿一恵理事に導かれて「和—久ステップ茶屋町」を見学しました。ここでは、「中途障がいの方々の社会参加の出口戦略として、役割や社会的居場所提供による主体的生活のための社会資源」をコンセプトに就労継続支援A型とB型の事業に取り組んでおりました。事業内容は「干ししいたけの製造・販売」、「弁当の調理・出張販売」、「農作業請負」、「内職作業」、「資源ごみの分別」などです。はじめに、干ししいたけの封入、軽量、ラベリングの工程を見学しました。その後、弁当の出張販売に関する野菜洗浄、カット、計量、食器洗浄作業を見学しました。さらに、資源ごみの分別作業の見学をしました。昼食は、東館ラウンジで就労継続支援A型の事業所で作られたクオリティの高いお弁当を頂きました。この見学を通して、姉妹校であるコロラド州立大学(CSU)のCenter for Community Partnerships (CCP)の取り組みを想起しました。2006年夏、CSUで2か月半研修した際にも、CCPの取り組みに参加し、地域における作業療法士の必要性を痛感して帰国しました。
 昼食後は、創心会リハケアタウン(北館)を訪れ、デイサービス、事業所内保育施設、児童発達支援ルーム、グループホーム、ショートスティを見学しました。各々サービス内容に合わせて施設環境に工夫を凝らし、落ち着いた雰囲気の事業所でした。要所には作業療法士や理学療法士を配置し、リハビリテーションサービスに力を入れていることが分かりました。児童発達支援ルーム「心歩」センター長の西江勇太氏(作業療法士)からは、放課後等デイサービス事業の取り組みを詳しく伺いました。認知症デイサービスの「五感リハビリ倶楽部」では、浦道さとみ氏(介護福祉士)から五感「目(視覚)・耳(聴覚)・鼻(嗅覚)・舌(味覚)・皮膚(触覚)」の刺激を取り入れたリハビリテーションサービスの取り組みを紹介して頂きました。また、「ポジリハショート」と銘打ったショートスティでは、山西孝彦氏(理学療法士)から「元気になって帰って頂く」の目標で取り組んでいるプログラム内容の説明を頂きました。この施設では、ベトナム社会主義共和国で看護師として学んだ研修生を受け入れておりました。国際福祉人材開発担当の宮内祥氏(社会福祉士・介護福祉士)から詳しい説明を受け、海外の人材育成に取り組む魅力を伺いました。その後、東館で行なっている元気デザイン倶楽部では、本物ケア推進部統括責任者の坪井美由樹氏(介護福祉士)の案内で、自立している方やもう少し頑張れそうな方を対象に介護予防・能力開発型を目的とした短時間デイサービスの見学をしました。また、午後の休憩時には、東館ラウンジにあるパン工房(地域コミュニティChayaCafe)のお話を伺いました。地域コミュニティChayaCafeに勤めるお二人の従業員は、もともと介護福祉士として働いていた方とのことです。お二人をパン職人にするために創心會から出向させ、パン職人として十分な修行を積ませた上で、開店に漕ぎ着けたとのことです。お二人は、お客さんに寄り添えるパン職人を心がけているそうです。さすがは、介護福祉士のパン職人です。主力商品の塩パンやカレーパンは、とても美味でした。その後、執行役員の藤井秀章氏(人事部長)、岡本聖子氏(総務部長)、取締役の田中真允氏(事業統括部長)、エリアリーダーの藤原大輔氏(作業療法士)、三木惇郎氏(作業療法士)と意見交換をして一日目が終了しました。
ChayaCafe
 
 二日目は、岡山駅前で株式会社「ハートスイッチ」が経営する就労移行支援事業ハートスイッチ岡山校を見学しました。ここでは、サービス管理責任者の持田あゆみ氏(作業療法士)から詳しい説明を頂きました。当日は、倉敷校のサービス管理責任者である千葉由香里氏(作業療法士)も同行して下さり、スクール形式の就労移行支援事業の実情をお話頂きました。対象の半数が発達障害の方で、次いで高次脳機能障害、精神障害、知的障害、身体障害の順でした。「数千種類のメニューを用意して個別対応しております」の説明に、作業療法士が関わる意義を感じ取りました。
 その後、笠岡市にある就労継続支援B型「和ー久ステップ笠岡」でネギの出荷・選別作業を見学しました。ここへ向かう途中、事業所がカットネギを収めている地元で人気のラーメン店「とんぺい」に立ち寄り、ネギラーメンを頂きました。麺とカットネギとスープの相性が絶妙の一品でした。事業所では、エアコンプレッサーを用いたネギの選別作業を体験しましたが、初心者の私には難しい作業でした。そして、カットネギ出荷までの工程を見学しました。
とんぺいネギラーメン
ネギ作業
 
 最後に、4ヘクタールの畑で青ネギ栽培をしている農業生産法人合同会社ど根性ファームを訪れました。介護福祉士から農民に転じた統括支配人の山田浩貴氏から詳しい説明を頂きました。また、本部事務職として採用されたものの、農民としてネギ栽培に従事している営業担当の宇川喜司氏の働きぶりも見学しました。近代作業療法の開祖の一人であるGeorge Edward Bartonは、その著書「Teaching the sick: a manual of occupational therapy and reeducation」の中で、障がい者が社会復帰するための手段としての農作業の活用を解説しております。農作業には沢山の工程が存在するため、対象者の障害程度に合わせた作業活動の選択が可能です。しかし、自然相手のため環境調整が難しい上に、農業生産法人としての経済性と就労継続支援の両立は容易でないことが伺われます。それだけに、努力する甲斐があることを皆さんの真っ黒に日焼けした姿から感じ取りました。 
 国は地域包括ケアシステムの構築に向けて、種々の政策を展開しているものの、その主眼は高齢者対策が中心です。我々作業療法士は、老若男女を問わずに、身体や精神に障がいを抱える方々に関わる職業で、その活動の中心は地域にあることを再認識しました。創心會が取り組む地域支援ネットワークの視察を通じて、地域における作業療法士の展望が開けました。
 末筆ながら、ご多用中のところお付き合い頂きました二神社長をはじめ、創心會のみなさま、利用者のみなさまに感謝申し上げます。