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平成27年度 卒業研究論文集 巻頭言

このたび,平成 27 年度作業療法学科卒業生による卒業論文集が完成しました.この卒業論文集は,第 13 期生(通算 16 期生)が本学における学業の集大成として取り組んだ成果です.まずは,卒業研究をはじめ,第 13 期生の学業にご支援頂きましたすべての皆様に心から感謝申し上げます.第 13 期生のみなさんは,卒業研究を通じて,専門職にとって研究がいかに重要であるかを実感したことでしょう.実社会においても研究することを忘れないでください.そして,一人ひとりの対象者を大切にし,作業療法の知見を集積してください.

今年は日本に作業療法士が誕生してから満 50 年です.一足早く,昨年には独立行政法人国際協力機構(以下, JICA) の青年海外協力隊が,満 50 年を迎えました.その記念事業の一環で JICA 研究所が主催した「青年海外協力隊の学際的研究」の公開シンポジウムがあり,強い関心を持って参加しました.シンポジストの方々は,社会心理学や文化人類学の専攻で,そのデータ解析方法は,質的手法と量的手法の組み合わせが中心でした.そして,これらの研究手法は,作業療法にも応用できる内容でした.

主題が「“めげずに頑張り続ける力”はどこからくるのか」の発表では,「自走・自助努力型ではなく,相談や支援のチャンネルを複数持ち,適宜“頼れる力”のある人」とのことでした.そして,「上手に行かなくても割り切れ,生活を楽しむなどの切り替えをし,主観的満足感が得られる人,ストレスを溜めない人は,めげずに頑張り続けられる」とのことでした.「協力隊と社会人基礎力」の報告では,「隊員経験を通じて,チームで働く力が伸び,働きかけ力や創造力も伸びた」とのことでした.そして,「より傾聴力,柔軟性,ストレスコントロール力が高い隊員ほど配属先での問題が少ない」との結論でした.

これは,作業療法教育にも通じる内容です.以前,起業した作業療法士に,学生が卒業までに身に付けて欲しい能力を伺ったところ,協調性 , 適応力・柔軟性,感情移入,伝達力,欲求不満耐性,謙虚さ,生活力とのことでした.既に,第 13 期生のみなさんは,これらの能力を身につけたことでしょう。これからは,臨床の場で自己研鑚しながら,見通し力 vision ,統率力 leadership ,経営力 management ,交渉力 negotiation skill を培ってください.そして,暗黒面に陥ることなく,真のリーダーに育ってください.

そのためには,臨床,研究,教育能力をバランス良く育てることです.第 1 には,対象者への作業療法に全力を尽くし,その知見を集積して証拠 evidence を導き出すことです.この過程で,事象に関する情報収集,情報分析,課題発見,解決策の立案,解決策の実行と手続き,その結果の検証などの能力が培われます.第 2 には,集積した証拠を学術集会で発表することです.全国には日本 作業療法学会あり,東北には東北作業療法学会が,都道府県には都道府県作業療法学会があります.これらの学術集会で成果を発表し,積極的に議論することです.これによって,健全な評価能力が培われます.第 3 には,その成果を適切な査読付雑誌に投稿し公表することです.できれば,国際誌に公表することで学際性と国際性の両面を培ってください.

これらの努力を弛みなく続け,その見識をもって 次世代を育み,作業療法の発展に寄与する人こそ,本物の作業療法士であると確信しております.

みなさんのご活躍を期待しております!

平成 28 3

作業療法学科長 藤井 浩美